同級生の死
高校の同級生が亡くなった。話したことはなかったが、亡くなる少し前の同窓会で久しぶりに会った。
高校生の頃は話したことはなくても、そんなことは嘘のように話せる。冗談が言える。気軽に肩を叩いたりして笑いあえる…
同窓会の楽しさはそこにあるんだろうな。彼とはこの同窓会で初めて話をした。
およそ20年ぶりに再会した彼は、すっかり変貌しており、往年のシャープなストライカーの面影は微塵もなかった。かさかさの皮膚、まばらな髪の毛、土気色の顔は久しく笑ったことがなさそうだった。 普段親交はなくとも『どうしたの?』と思わず声をかけたくなるほどの衰弱ぶりだった。
診察、検査をしても原因不明だとか…。彼は、澱んだ黒目を泳がせて何も食べずに、肩で時々大きく息をして座っていた。 座っているのが精一杯のようだった。
柔らかいものを見つくろってお皿に載せて差し出したら、彼は大根の煮ものを少し口に運んだ。
『少しでも食べないと…体力なくなるよ』
そう言うと、彼は力なく笑っていた。なぜかわからないけれど食べてほしかった。
彼を愛しているとか、大好きとか、初恋の人だったとか…そんな特別な感情はサラサラなかった。 ただ、食べてほしかった。その一念だけだった。
二時間ほどしてお開きになった。
彼が食べたのはその大根一切れだけだった。 二次会に行く段取りをしている間に彼の姿は消えていた。 『あいつ、大丈夫かなあ』
男子の誰かがポツリと言った。
それから四年…彼の訃報をきいた。
あの時、彼がたった一口、『ありがとう』と言って口に運んだ大根から立ち上っていた湯気までありありと思い出した。
400名ほどの同級生の中での忘れられない一期一会である。
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